先日、奇妙な体験をした。名古屋東端の隣接地域、長久手町を貫いて走る
グリーンロードを一本脇道に逸れたある一方通行の道路沿いに私のアパートが
ある。この通りを大学のある東の方向へ、錆びた自転車でギィコギィコと言わせて
いたら、距離にして家から約100メートル程離れた歩道の上に女性らしき人影が
あって、白い開襟の夏服と青いタイトスカートの装いで、小旗を手にして立って
いる。しかし、胴太短足で見るに忍ばれず、「コスプレと自由の意味を履き違えて
いる、誰もがコスプレできるわけではないのに」と思いながらすれ違うと、それは小
学生を交通事故から守るために通学路に配備されたPTAのおばさんだった。私
はひどくがっかりしてその場を後にしたのだが、後から考え直してみると、あの場で
私が巡らせた思考の方が婦人の姿より醜悪で、その醜さに気付いた私はただ
瞠目するのみだった。
もうお気付きかと思うが、上にしたためた通り、私は道端に立っている制服姿の
女性を見て、「スタイルの悪い女性がむやみにコスプレするのはナンセンスだ」と
本気で思ったのである。よくよく考えてみれば、一般的な生活が営まれている
普通の町中で制服姿を見たなら、まずはその制服を着るべき職業を想起する
べきであろう。しかも名古屋の外れにある町村で、女性が一人コスプレして立って
いるというのは異常だ。そういう理由で、私がこの日にたどった思考経路は人の
理解力をはるかに超えている。