これほど私の周りに阿呆がいるというのも腑に落ちないことで、よく考えてみる
と、どうやらこの原因は近頃のストレスや天候の変化に伴う疲労にあるらしい。
彼らは疲れている。リーダーが、S書房のおやじが、この季節に大きな疲労を
抱えていて、そのために方向感覚が鈍っている、そう私は解釈した。そして、私
もやはり、疲れている。例えば先日はある女性の服装を描写するのに「ボーダー
のシャツ」という言葉が思い浮かばず、「縞々柄のシャツ」としか言えなかった(実
は本当に知らなかった。ボーダーって国境線?)。
日々の喧騒に巻かれて、あるいは新しい生活に慣れずに、はたまた天候の
変化に敏感になって、私たちは思うように頭が働かないほど、疲れているのかも
しれない。そういうわけで、癒しを得ることは焦眉の問題だ、そう執拗に感じた。
さて、先ほど本を購入したS書房を出て、長久手町の我が家へ帰ろうかと思っ
た頃、手前にある歩道では下校中の女子小学生4,5名程が、たくさんの自転
車が駐車しているために歩くことがままならないような通路を列になって歩いて
いた。一人の女の子を先頭に、残りの子はじゃれ合いながらまばらに歩いている。
そこへ勢いよく坂を下ってくる一台の自転車。かなりのスピードで向かってくる。
女の子達の前で止まるには、停止距離が長すぎる。しかし、そのような状況下
にあって、先頭を歩いていたかの女の子は、後ろへ続く子たちへ冷静に「あぶな
いよ!(敢えて平仮名。だってかわいいから)」と言って仲間を端へ寄せた。私は
一瞬立ち止まり、大いに身震いした。「ああ、何が疲れている、だ。あんな小さ
な子供だって冷静な判断をしているじゃないか。」そうなのだ。これは意志の
問題なのだ。心もちの問題で、何とかなる話なのである。ようし、俺も気を引き
締めていこう。あの時はそう思ったものだ。