気を取り直して藤が丘を出ようとすると、駅前にあるドーナツショップの隣に
ある広場がこれもまた下校中の女子高生たちで騒がしいので、何かと思って
辺りを見回してみると、どうやらその日、駅前にサーティーワンアイスクリームが
開店したそうで、そこのアイスを味わう乙女達でいっぱいなのであった。私は
この場に一秒でも長くいようと、しかし決して怪しまれることの無いように、その
店でアイスを買い、それを食べることにしたのだが、そこで私は射抜かれた。
アイスを売る娘の可燐なこと、客への応対がひどく洗練されていること、この上
ない。彼女らは、指先をホワイト急便のハートマークのように重ねてさも申し
訳なさそうにお金を受け取る。アイスを渡してくれるときもわざわざ指先に
載せて(コーンでなく、カップの場合)大事に、大事に運んでくれる。もう私の
体には緊も張も無かった。あるのは弛緩のみ。気を引き締めてなんかいられ
ない。店員に癒されて、女子高生に癒されて、もちろんアイスにも癒されて…
この日の藤が丘歩きはとんだレクリエーションになってしまった。 その日の
勉強ははかどった。いつになくはかどった。きっと脳内のエンドルフィンが盛んに
出たからに違いない。確かに意志の力は重要だ。心の持ちようは人を愚者
にもするし、聖者にもする。しかし、そんな意志も心の平和無しには容易に
挫折し兼ねない。だから私はとりわけ、なかんずく、第一に勧めたい。「サー
ティーワンに癒されろ!」(終)